以前もお話ししましたが、私の祖母がアルツハイマー型認知症で他界しています。
認知症は、私にも重要な問題なのです。
日本では2025年に75歳以上の人口が全人口の約18%になります。
医療も進化し様々な病気を予防して治療ができるようになり、
平均寿命もどんどん上昇しています。
一方で少子高齢化、過疎化、核家族化が進み、高齢者の独居も増え、
高齢者も元気で自立した生活を送ること
が必要になってきています。
認知症に関しては、
昨年レカネマブという新薬が
発売されましたが、
未だ根治する病気ではありません。
そこで、いかにして認知症の発症を
予防するかということが重要です。
ここからは罹患者の多いアルツハイマー型認知症に関してお話ししますが、
アルツハイマー型認知症の遺伝に関してはたくさんの研究がされています。
そして発症の原因になる遺伝子(原因遺伝子)や
発症のリスクになる遺伝子(リスク遺伝子)などが発見されています。
原因遺伝子での発症者は患者全体の1%未満と非常に稀ですので、今回は割愛します。
リスク遺伝子は、何十種類と見つかっていますが、
発症のリスクが1.1〜1.2倍に上昇する程度と
それほど高いリスクとは言えない状況のようです。
リスク遺伝子の中の
アポリポプロテインE遺伝子(Apo E)
の種類によって
発症のリスクが10倍以上
に上がってしまう事もあります。
しかし
このリスク遺伝子を持っていなくても発症する人
もいれば、
このリスク遺伝子を持っていても発症しない人
もいます。
認知症を「発症する、発症しない」はどのような違いなのか、
まだはっきりとはわかっていませんが、
現時点では複数の危険因子の関与で発症すると言われています。
複数の危険因子の中で現在一番予防ができると言われているのは
生活習慣の改善です。
そのため、
動脈硬化(禁煙、糖尿病、高血圧など)の予防や治療は大変有効です。
先日私が参加した認知症学会でも
「認知症と日々の生活習慣(①睡眠②運動③会話)の関連」
について発表されていました。
私も日々の外来診療で感じますが、
心身ともに元気で活動性の高い高齢者の方
は認知症を発症しにくい印象です。
ところで、睡眠時間が短い人は認知症になりやすいと聞いたことがありますか?
これは睡眠効率が低いこと(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒など)を示していますが、
睡眠効率が低いとアミロイドが蓄積されやすいようです。
アミロイドとは体にとって生理的に
産生され排泄されるタンパク質で、
アルツハイマー型認知症の方は
アミロイド(アミロイドβ)が脳内に
異常蓄積して神経細胞変性を起こし
脳萎縮、脳機能低下を起こします。
そして、
このアミロイドは覚醒時間内に産生され、
睡眠時間内(最低6時間以上の睡眠が必要)
に排泄される
ことが研究でわかっています。
Ju Y-E S, et al. Sleep Quality and Preclinical Alzheimer Disease. JAMA Neurol. 2013
このため
睡眠が疎かになると
アミロイドが排泄されにくくなります。
では、この①睡眠をよくするためにはどうすればよいか。
ここで日中の生活習慣(②運動と③会話)が関わってきます。
身体活動と睡眠効率が関連することは研究でもわかっており、
身体活動を多くしている人は
睡眠効率も高くなります。
そして身体活動は安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する
骨格筋の収縮 を伴う全ての活動を指すので(※副院長のささやき02)、
家事をする、家の中の階段を登り降りする、
いつもより動くことをするだけでいいのです。
すなわち
散歩は最高の活動です。
「歩数が多い人ほど睡眠効率が高く、
中途覚醒時間が減る」
と報告されています。
ここで以前のコラムで話した
認知機能改善が期待できるのが冬虫夏草です。
この冬虫夏草は睡眠の質が上がるというデータも報告されています。
山本真史 , 他 . カイコハナサナギタケ冬虫夏草の睡眠改善効果, アンチエイジング医学 , 19(5), 48-54
睡眠の改善は認知症の予防になることから、
「冬虫夏草の認知機能改善効果は睡眠の質を向上させることが要因の一つ」
と繋がります。
もし「こんなに日々身体活動をしているのに夜眠れない」と悩む方は、
このようなサプリメントも良いかもしれません。
ちなみにこの冬虫夏草、男性更年期の改善効果も報告されています。
山本真史 , 他 . カイコハナサナギタケ冬虫夏草による中高年男性の更年期症状の改善効果, アンチエイジング医学 , 20(4), 47-57
院長も私も現在内服しています。
確かに入眠、中途覚醒に効果があるようです。
あくまで個人の意見なので、
気になる方は当院にご相談くださいね。
ここまで話していると、
「え?うちのおじいちゃん、昼間ずっと寝てるけど、
たくさん寝ることはいいことなの?」
と思う方がいらっしゃるかもしれません。
実は、昼夜問わずたくさん寝てしまうことはあまり良いことではありません。
既往に脳疾患、慢性疾患、睡眠時無呼吸など病気をお持ちの方、
また慢性炎症がある方は長時間睡眠と関連があることがわかっており、
これは
脳機能低下に伴う睡眠であり、
認知機能低下のリスクがある
こともわかっていてます。
このようなことから
夜間の良好な睡眠のために、
日中は適度な身体活動を行い、
社会と関わることが大切なのです。
今回はアルツハイマー型認知症についてお話ししましたが、
認知症で次に多い脳血管性認知症にも
生活習慣病の予防、動脈硬化の予防が一番ですので
似たことが言えるかと思います。
今一度、ご自分の生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
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